春夏秋冬ノスタルジア

春は桜雲の下 新しきを喜び、笑い合い
散り行く華に思いを馳せて
届く距離が遠かった

今でも思い出す、春の景色は
風に踊る淡い薄紅と
あのひとの笑顔が良く映えた

夏は快晴の下 眩しい遠い青に眩惑され
真実なんてどちらでも良くて
遠い未来に瞑目していた

今でも思い出す、夏の陽射は
汗の光る、走るあのひとと
同じくらいに眩しかった

秋は紅葉の下 待宵の儚さを知り
でも朝になれば涙も乾き
立待月には願わくば隣に、なんて

今でも思い出す、秋の夜空は
恋路十六夜の闇に
瞬く炎星が切なかった

冬は寒空の下 風花は空にたゆたい
勿忘菫が咲くところを見ると
現在が思い出と呼ばれそうで怖かった

今でも思い出す、冬の雪原は
微かな恋待蕾の予感さえ
あのひとの帰りに希望を見せた

今でも思い出す、あのひとの背中は
わたしの脳裏に鮮烈に焼きついて
振り向いてくれないから忘れられない


2005年9月11日