[あいしてる]なんて
ひどく無責任なことばで
ひどく浅薄なひびきだと思っていた

あの橙色の部屋で
きみに逢うまでは

それなのに どうしてか いま
そのことばが あたしの唇からすべりおちて
きみとのあいだにあるくうきを震わせている

[あいしてる]なんて
ひどく曖昧なまぼろしで
ひどく残酷なやさしさだと思っていた

あの有り触れた牢獄で
きみに逢うまでは

どうしてだろう、ね
きみをあいしているよ


「幻じゃない」070104