通り過ぎたあの日を振り返る
同じ顔の自分が立っている
彼はわたしをあいしていたのだろうか
ほんとうにあいしていたのだろうか

今更しても無駄でしかない推測が
せっかく美化された思い出に
黒いしみを、ひとつふたつ、残す

段々と穢れてゆく記憶に
縋ってはいられなくなる

彼はわたしをあいしていたのだろうか
ほんとうにあいしていたのだろうか

気が狂いそうだ
基、既に狂っているかもしれない

彼はあのこをあいしているのだろうか
ずっとずっと、あいしてゆくのだろうか

夢の中で笑う彼さえ
あの日の儘ではない

あの日から
止まっているのは
わたしだけだ


「グロース」080105