O高校の志願申告書という物があって、願書と一緒に出すんだけれど、そこに「将来の夢・希望」という欄がありました。あたしは幼稚園の頃から唄う事が大すきで、七五三の時のビデオに映ってるあたしが、なぜか唄ってたりして。(←記憶にない人笑) 小学生の頃も歌手になりたいと思っていたけど、あたしはなぜが小さい頃から妙に冷めていて。「歌手になんかなれる訳ない」って常に思っていました。小6の卒業文集のテーマは同じように「将来の夢」で、あたしは悩んだ結果「歌手になりたい」と書いたけど、「なれないのが現実かもしれないけどわたしは夢見て歩んでいきます」みたいな事が書いてあって、小学生らしくないなあって思ったり(笑)

中学生になってから、本気で「歌手になりたい」なんて人に言った事はなかった。そんな夢を見ている事がくだらなく、とてつもなく幼い事のように思えて憚られたからだと思います。だけど心の奥では、いつだって側にいて励ましてくれていた音楽の存在がきらめいていて、いつかはあたしもそうやって誰かを励ませるような音楽を作り出したいと思っていました。オンでこんな事を言うのは、すこし前までのあたしだったらありえない事で。本当にくだらないと思っていたのでしょう。

志願申告書を書く時、あたしがずっと「書けない」と言っていたから、お母さんが側についていてくれました。「とりあえず箇条書きでも良いから書いてごらん」って言われていて、あたしは「音楽、詩、雑誌、本」と書きました。だけどもうそれ以上書けなくて。お母さんが「たとえばこんな事?」みたいにいろいろ言ってくれているのに、なにも書けなくて。気付いたら涙がたくさん出てきて。ROCKIN' ON JAPANのライターの人になりたいとか、CDショップの店員さんになりたいとか、そういう事は他人にも言えたのに、奥の方に鍵をかけられたあの気持ちは誰にも言えなくて、どこにも書けなかった。

歌を書いて唄う人になりたい。誰かを励ませるような、誰かの力になれるような、誰かの一歩のお手伝いができるような、そんな歌を唄いたい。アジアンカンフージェネレーションが、バンプオブチキンが、ミスターチルドレンが、エルレガーデンが、ゆずが、あたしにそうしてくれたように。ぐるぐる巻きに錠のついた小さな箱に閉じ込められた、幼く拙い夢が、ふとした瞬間の涙であまりに容易く溶け出してしまった。心の奥で鍵が開くのを感じたんです。もう逃げられないって。

だけどやっぱりあたしのひねくれた性格は治らなくて。「歌手になんかなれる訳ない」とは今でも思ってる。だから、それで良いんです。あたしは別に、メジャーデビューして、売れて、たくさんの人に名前を覚えてもらって、お金をいっぱい貰いたい訳じゃないんです。いつだって音楽の側にいたくて。できるなら自分で曲を書いたりして、できるならそれを誰かに聴いてもらって。なんとなく平穏で幸せな生活の中に、当たり前のように音楽がそこにあったのなら素晴らしいと思います。

あたしの将来の夢は、いつだって音楽の側にいる事です。


2006年1月31日