いまも あたしは
記憶の海で溺れている

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慟哭の真ん中
欲望は喉の奥で滞塞
想いは言葉には成らず
泪に成って溢れ出でる

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肌に纏わりつく湿った空気が
如何してもすきになれないから
この季節の詩は,痛くはかない

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うたうことしか できなかった

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体を刺す強い陽射に
絶え間ない酷い雨に
あなたの哀しい優しさに
あたしは いまにも とけそうだ

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にせもののまつげを 泪が浚う
にせもののひとみが 泪を奪う
にせもののえがおを 泪が崩す

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きみの残酷なやさしさで形成られたぼくは
いつしか歪んだ愛で壊れてしまうとおもうんだ

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あのとき すなおに泣けなかったことを
ほんとうはいまでも とても悔やんでいる
せめて手を振るときに せめて踵をかえすときに
ひとしずくの泪でもながせればよかった

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うつくしく燃えるそらが
最期の力を振り絞っているように見えるのは
きっとぼくが歪んでいる所為なんだろう

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きみのゆめをみているぼくを
げんじつのぼくは 心から羨む

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あのひとを忘れるこころの準備は
いまのあたしにできているのだろうか

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きみの大きなてのひらも
すこし猫背のせなかも
となりでわらう表情も
もう なにも 求めない

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すこし哀しい岐路に立って
あたしはのうのうと 笑っている

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こころから わらえない ぼくを赦して

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空を飛ぶ軟式ボールを目で追った
容赦ない太陽とそれが被ったとき
ぼくがおぼえた激しい眩暈は
あの忘れたい恋に似ていた

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得るものの何もない恋なんて
辛いだけの恋なんて
あたしには必要ないと思ったんだ

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この心が見つけ出してしまった想いを
あたしのこの手で葬り去る
さようなら もう2度と 帰っては来ないでね

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指で触れられるくらいの後悔を
まざまざと目に浮かぶ羨望を
肌にまとわりつく憎悪を
奥の奥に押し込めて 君の胸で目を閉じる

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抱きしめてくれる腕の体温が欲しいだけだった

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いつかまた笑顔で会えたら
"だいすきでした"と伝えよう
彼に贈る 最後のあいのことばにしよう